岩谷時子賞

岩谷時子賞

大竹しのぶさんは、デビュー以来、気鋭の映画監督、舞台演出家の作品に多数出演され、主要な映画・演劇賞を数々受賞されるなど、世代を超えて支持され続けている、名実ともに日本を代表する俳優です。2011年には紫綬褒章を受章されました。昨年デビュー50周年を迎えてもなお、映画、舞台、TVドラマ、ミュージカルやコンサートなど、ジャンルにとらわれず才能を発揮し続けているその姿勢と功績が評価され、今回の受賞となりました。

クミコさんは、1982年に銀座「銀巴里」でプロ活動をスタートした日本におけるシャンソン歌手の第一人者です。2002年には「わが麗しき恋物語」がヒット、2010年には「INORI〜祈り〜」で第61回NHK「紅白歌合戦」初出場を果たされました。今年は、越路吹雪の生誕100 年ということもあり、岩谷時子訳詞によるシャンソンを、CD、舞台、放送など様々な場面で披露され、シャンソンの魅力を改めて世に広められていることなどから、特別賞の受賞に至りました。

俳優・シンガーである海宝直人さんは、子役で舞台デビュー以来、岩谷時子訳詞による「ミス・サイゴン」「レ・ミゼラブル」をはじめ、数多くのミュージカルの名作に主役・要役として出演し、熱い支持を得ています。海外からの評価も高く、2018年には、ロンドン・ウェストエンドでの舞台にてメインキャストデビューされました。来年2025年には、舞台芸能活動30周年を迎えられる海宝さん。今後の益々の活躍が期待されていることから奨励賞の授与が決定しました。



また、2011年からスタートし、今回で12回目を迎えた音楽・芸術を志す若い方々を応援する「岩谷時子 Foundation for Youth」には、落合真子さんと東亮汰さんのお二人が選出されました。

落合真子さんは、東京藝術大学を主席卒業し、現在は大学院修士課程1年に在学中のヴァイオリン奏者。10歳から参加した佐渡裕スーパーキッズ・オーケストラでは、2018年度のコンサートミストレスを務めるなど幼いころからその才能を認められ、第90回日本音楽コンクールをはじめとした多くのコンクールで賞を獲得されてきました。また国内外の音楽祭や、多数の演奏会に参加するなど、将来を大変嘱望されています。

東亮汰さんは、現在、桐朋学園大学大学院修士課程3年に在籍する傍ら、若手音楽家の登竜門として知られる日本音楽コンクールで第1位、今年のヨハネス・ブラームス国際コンクールでは第2位を受賞されるなど、輝かしい成績を収めながら国内外で精力的に演奏活動をされています。また、NHK Eテレアニメ「青のオーケストラ」では主人公の演奏を担当、メジャーデビューアルバムで第16回CDショップ大賞2024クラシック賞を受賞するなどの実績を持つ、新進気鋭のヴァイオリン奏者です。

選考委員<五十音順 敬称略>

佐渡裕(指揮者)
別所哲也(俳優/ショートショートフィルムフェスティバル&アジア 代表)
村岡恵理(作家)

2024年11月18日 パレスホテル東京にて授賞式開催

岩谷時子賞【2024年 第13回】授賞式
左から竹下景子、東亮汰、クミコ、岩谷時子(写真)、海宝直人、大竹しのぶ、落合真子<敬称略>

「岩谷時子賞」を受賞された大竹しのぶさん 「岩谷時子賞」を受賞された大竹しのぶさん
「岩谷時子賞」を受賞された大竹しのぶさん。スピーチでは、これまでの俳優人生に想いを馳せ「本当に私はいい作品に出会えて幸せだなって心から思っています」と語ったほか「私たちは言葉を伝える仕事なので、これからも岩谷先生の言葉を伝えていけるように、思いを伝えていけるように、一生懸命頑張っていきたいと思います」「この賞に負けないように、これからもいいものを届けられるように頑張っていきます。本当に選んでくださって ありがとうございました」などとコメントされました。そして、ステージでは、岩谷時子が詞を訳したエディット・ピアフの「水に流して」を披露。ご自身が主演した舞台「ピアフ」の中で最後に歌われる歌だと紹介し「何度でも人生はやり直せるという思いを込めて歌いたいと思います」と話された言葉の通り、力強い意思と未来への希望を感じさせる歌声に、観客は一様に心を掴まれている様子でした。

「岩谷時子賞 特別賞」を受賞されたクミコさん 「岩谷時子賞 特別賞」を受賞されたクミコさん
「岩谷時子賞 特別賞」を受賞されたクミコさんは、「越路吹雪さんの歌がこそが私にとってのシャンソンだった」とした上で、その越路吹雪のシャンソンの訳詞を担っていた岩谷時子の詞について「まだ若かった私は、人の重層的な部分が垣間見える言葉の数々にとても惹かれて、 なんて素晴らしい方がいるんだろうと思っていました」とコメント。また「それが、まさかこんな風な形で、その岩谷時子さんの名前を冠した賞をいただけるなんていうのは、本当に幸せな人生を歩けているなと思っています」と、受賞の喜びの気持ちを語られていました。また、この日は、パリオリンピックの開会式を見て、曲への思いをさらに深められたという「愛の讃歌」を歌唱。切なくも伸びやかで愛のこもった歌声は、会場中を魅了しました。


「岩谷時子賞 奨励賞」を受賞された海宝直人さん 「岩谷時子賞 奨励賞」を受賞された海宝直人さんは、ミュージカルの世界に飛び込んだ子供時代からを振り返り、周りの方々からの支えを実感しているという気持ちを述べられました。そして、人生の節目節目で、岩谷時子が訳詞を担当したミュージカルに出演していることに触れ「今回こうして岩田さんのお名前が冠されたこの賞をいただけるということは本当に光栄ですし、嬉しいことだなと思っております」とコメント。また「これからも思いを込めて、守りに入ることなく攻めの姿勢で進んで行きたいと思っています」とこれからの芸能活動への思いも語ってくださいました。

「岩谷時子 Foundation for Youth」に選出された落合真子さん 「岩谷時子 Foundation for Youth」に選出された落合真子さん
「岩谷時子 Foundation for Youth」に選出された落合真子さん。スピーチでは「今はまだ人生という長い旅の途中で、それを音楽と一緒に歩んでいるところではありますが、この賞を励みに世界に向かってチャレンジしていけたらいいなと思っております」などとコメント。そして、9歳の頃から師事されているという選考委員の佐渡裕さんにかけられた言葉を紹介して下さった際には、涙で言葉を詰まらせる場面もあり、今回の選出に対しての熱い思いが会場全体に伝わりました。

「岩谷時子 Foundation for Youth」に選出された東亮汰さん 「岩谷時子 Foundation for Youth」に選出された東亮汰さん
また、同じく「岩谷時子 Foundation for Youth」に選出された東亮汰さんは、選出の喜びや感謝の気持ちを述べるとともに、世界のクラシック界における日本の地位の向上に寄与したいという大きな志を披露。「この音楽界を俯瞰して、自分が何をするべきなのか、何をできるのか、 そういったことをしっかりと考えながら、今後音楽活動をしていきたいと思っております」と話し、決意を新たにしている様子でした。

「岩谷時子 Foundation for Youth」を受賞された落合真子さんと東亮汰さん この日、お二人はデュオでバッハの「2つのヴァイオリンのための協奏曲 より 第2楽章」を演奏。二人の優美なヴァイオリンのハーモニーが会場中を満たし、観客はその音色に酔いしれていました。