岩谷時子賞

岩谷時子賞

坂東玉三郎さんは、1957年に初舞台を踏まれ、1964年、五代目坂東玉三郎を襲名されました。2012年には、重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定。 さらに、2014年には紫綬褒を受賞され、歌舞伎界を背負って立つ立女形(たておやま)として活躍を続けていらっしゃいます。岩谷時子は、若い時から坂東玉三郎さんの実力を認めており、岩谷時子がマネージャーとして支えた越路吹雪さんとも長年にわたり深い交流がありました。さらに、岩谷時子と関係の深い日生劇場で、「坂東玉三郎 越路吹雪を歌う」を成功させ、今年も11月7日の越路吹雪追悼コンサートへ出演が予定されているなど、シンガーとしても活躍の場をさらに広げられていることなどが評価され、今回の受賞となりました。

宇崎竜童さんと阿木耀子さんは、作詞:阿木燿子・作曲:宇崎竜童のコンビで、「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」以降、数多くのヒット曲を生み出しました。山口百恵さんの曲の作詞・作曲を手掛け、山口百恵さんの黄金時代を支えられたのをはじめ、沢山のアーティストに詞を提供し、数々のヒット曲を世に出していらっしゃいました。また、近年は、音楽監督とプロデューサーとして、近松門左衛門の人間浄瑠璃「曽根崎心中」とフラメンコを融合させた作品「Ay(あい)曽根崎心中」の公演を、ライフワークとして続けられていることなどから、特別賞の受賞に至りました。

昆夏美さんは、2011年、『ロミオ&ジュリエット』のオーディションでジュリエット役を射止め、メジャー作品プロデビューを飾った後、岩谷時子訳詞作品に多く出演し、現在も『レ・ミゼラブル』でエポニーヌ役を演じていらっしゃいます。来年には『ミス・サイゴン』でキム役を務めることが決まっており、ミュージカル界を代表する女優となるべく、今後さらなる活躍が期待されることから奨励賞の授与が決定しました。



また、2011年からスタートし、今年で9回目を迎えた音楽・芸術を志す若い方々を応援する「岩谷時子 Foundation for Youth」には、ピアニストの藤田真央さんが選ばれました。

藤田真央さんは、2017年、弱冠18歳で第27回クララ・ハスキル国際ピアノ・コンクールで優勝。一躍世界の注目を浴びました。国内はもとより、各地でリサイタル、オーケストラとの共演を行なっています。今秋に公開される映画『蜜蜂と遠雷』では、風間塵(かざま じん)役の演奏を担当することが発表。現在、特別特待奨学生として東京音楽大学3年ピアノ演奏家コース・エクセレンスに在学し研鑽を積んでいらっしゃいます。また、今回、チャイコフスキーコンクールに初参加し、ピアノ部門で2位を獲得。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの活躍を見せるピアニストです。

審査委員<五十音順 敬称略>

川口 真(作曲家)
草野浩二(音楽プロデューサー)
都倉俊一(作曲家)

2019年7月1日 パレスホテル東京にて授賞式開催

授賞式
左から竹下景子、昆夏美、坂東玉三郎、岩谷時子(写真)、宇崎竜童、藤田真央、阿木燿子<敬称略>

「岩谷時子賞」を受賞された坂東玉三郎さん。「20歳の頃から岩谷先生とは大変親しくさせていただいておりましたけれども、今日こうして(賞を)いただきますと、思いもひとしおでございます」と喜びの気持ちを話されました。また、生前の岩谷時子との思い出を聞かれると「長いことお知り合いでしたので、思い出ひとつだけ語るのは難しいのですが、1973年に『青春の鏡』という詩集のレコードを出しまして、その時岩谷さんが僕の思いを詩にして下さったことが一番初めての大きな思い出だと思います。その後は、舞台人として豊かな人生を送られるようにということで、本当にたくさんのことを教えていただきました」とコメント。さらに、岩谷時子が作詞を担当した「人生は歌だけ」を披露され、素晴らしい歌声が客席を包み込んでいました。

「岩谷時子賞 特別賞」を受賞された宇崎竜童さんと阿木耀子さん。阿木さんは「私は岩谷時子先生が大好きです。大学1年の頃に主人と知り合って、最初にレコードをプレゼントしてもらいまして、それが越路吹雪さんのレコードでした。生まれて初めて持った自分のレコードが、岩谷先生が作詞をなさっているものだったので、この道に導いでくださったのは、岩谷先生だったんじゃないかなと思います」と、岩谷時子の楽曲の思い出を語られました。また、宇崎さんが「(夫婦)二人同時に特別賞をいただくということは、今回が初めてでありまして…」と話されると、会場からは大きな拍手が。宇崎さんは、この拍手に応えるように「ありがとうございました!」とお礼の言葉を口にされていました。そして、この日は、ダンサーのフラメンコと共に、宇崎さんがギターを演奏しながら「道行華(みちゆきばな)」をライブパフォーマンス。その世界観に、会場全体が引き込まれていました。

「岩谷時子賞 奨励賞」を受賞された昆夏美さんは、幼い頃にミュージカルの世界に魅せられて、この世界に入られたと話され「私がこの仕事を続けられているのは、とてもシンプルな理由で、舞台・ミュージカルが大好きということと、あとは私が幼い頃に受けた感銘、感動をお客様にお届け出来たらいいなという思いでやっています」と仕事への思いを吐露。また今回の受賞については「この先辛いことがあったとしても、この賞を励みに、努力を怠らず、表現というものに真摯に向き合っていきたいと思います」と決意を述べられました。また、この日は、岩谷時子が訳詞を務めたミュージカル『レ・ミゼラブル』から「オン・マイ・オウン」を披露。その表現力溢れる歌唱力で客席を圧倒しました。

「岩谷時子 Foundation for Youth」を受賞された藤田真央さん。この日は、ピアノ部門で2位を獲得したチャイコフスキーコンクールが行われていたロシアのサンクトペテルブルグより会場に直行されたと話され、会場からは拍手が沸き起こりました。また、この度の「岩谷時子 Foundation for Youth」受賞については、コンクールの結果と共に「二重の喜びを噛み締めております」とコメント。「リスト 愛の夢 第3番『おお、愛しうる限り幸せ』」をステージで演奏し、繊細なかつ優美な音色が会場を満たしました。